Hi Betty!

moon続き

※旧作長編からの派生です

部屋に着いて、#name#をベッドに下ろすとクジャは身に付けていたコートに、シルクハット、眼鏡を外した。
真冬だとはいえ、人一人抱えて歩いてくれば少しは汗ばむようで、クジャは早くも身体を洗い流したかった。

「#name#、シャワーを浴びてきてもいいかい?」
「やだ。駄目。」

当たり前にすんなりとOKをもらえる筈だったのだが、思いもよらない返答が返ってきた。

「駄目って…」
「だって、クジャと離れたくないの。」

甘ったるい声できっぱりと言い放つ彼女には悪びれる様子など全くない。普段なら我が儘を言うことなどほとんどないので、はやり酒が入ったせいなのだろうか。先程は会話の内容もあってか、落ち着いてきていたように思えたのだが。

「離れるって言ったって少しだけだろう?すぐ戻ってくる。」
「でも嫌。」
「なら、一緒に来るかい?」

いつものように茶化したつもりだった。これで大体彼女は逃げに転じるが、それが再び予測のしなかった方向に流れていくことになる。

「んー……」

#name#は目を反らし考え込む素振りを見せた。そして、照れがあるのかほんのりと赤らんだ頬を此方に向ける。

「あのっ…」
「駄目だよ。酔いが冷めた君に怒られる。」

了承を得かけたところで、歯止めをかけた。しばらく前までこれを野晒しにしていたのだと考えるととてもじゃないが恐ろしい。

「そうかな?」
「怒らないにしても駄目だ。君には酒を飲ませるべきじゃないね。じゃあ、行ってくるよ。戻ってきたら、構ってあげるよ。」

クジャは半ば強引に言いくるめ、浴室へと向かった。

***

「#name#、もう寝たかい?」

骨ばった大きな手が頬を撫で、額、こめかみ、頬、と唇が落とされる。重たい瞼をゆっくりと開けば、クジャが優しげな表情で私を見下ろしていた。

「…もう終わった?」
「ああ。眠かったら、寝ててもいいよ。」
「…起きてる。」

未だ意識が朦朧とする中、抱き抱えるように彼の首に腕を回せば、そのまま唇同士が合わさり、何度も重なっては離れ、を繰り返す。一瞬彼の手が胸の膨らみに触れたが、はっとした様子で即座に離された。

「ねえ、我慢してる?」
「大丈夫だよ。君が気にすることじゃない。」

気を使っているのか、クジャは性に関することには頑なだ。私は一連の動作を再び続けようとする彼の輪郭を押さえ、止めさせる。

「別にいいよ、しても。」
「…そうはいかないんだ。」
「…寂しいの。みんなみんななくなってしまう。だから全部奪って。私の気持ち、埋めてよ。」

彼は眉を歪め、暫く考え込んでから、決心したように向き直る。

「後でどうなっても知らないよ。それでもいいのかい?」

ーーーうん。全部クジャにあげる。

この言葉がスイッチであるかのように、クジャは私の唇を奪い、片手間にやんわりと胸部に円を描いた。

「今までに味わったことないこと、教えてあげるよ。」

初めてされる行為に戸惑う私の耳を吐息の混じった低音が掠める。

「クジャ、私…あっ…」
「ん、どうしたんだい?」

胸を撫で上げる手つきが一瞬強くなり、誰に教わったわけでもなく艶やかな声が漏れた。目の前でわざとらしく首を傾げてみせる彼の、私の全てを見透すかしているとでも言わんばかりの表情が、驚くほど色っぽくて困惑してしまう。どうしたのかなんて私が知りたいくらいだった。

「なんかっ……」
「脱ごうか、#name#。」

クジャは言葉に詰まる私を見て小さく笑うと、部屋の明かりを消し、ベッドの脇にある小さなランプの明かりだけが頼りとなった。

「あっ待って…!」
「脱がないと続き、できないよ。」
「………!」

服に手をかけようとするクジャの手を掴み制止するが、逆に両手首を一まとめにされ、軽い拘束を受ける。私の意思など関係なく、“起きて”と上体を起こされると、背中の釦が一つ一つ外されていった。

「…見ちゃ駄目だよ?」
「それはたぶん無理だね。」

当たり前のように告げられると、背中側から紐解くようにドレスがはだけさせられ、肩から素肌が露になっていく。最初こそ抵抗を示したが、指先が袖を潜り抜ける頃には諦めが勝っていた。

「さあ、ここからが本番だ。」

彼の声と共に背中がシーツに埋められた。これからどうされてしまうのか。胸中を期待と不安が渦巻いている。隠すように胸元に寄せていた腕は頭上でまた一まとめにされ、胸部を隠すものは一切なくなった。

「クジャ、腕やだ。」
「でも隠そうとするだろう?」
「…んっ。」

案の定、私の意見は聞き入れられない。クジャは直肌に触れ、愛でるように乳房を大きな手で覆う。服の上からとは違う肌の吸い付くような感触が心地よかった。

「そんなに身を捩らせて、気持ちいいのかい?」

頭上で手を拘束されたまま、頬から顎、首筋周りを舐めるように彼の唇が這う。投げかけられる挑発的な問いに答える余裕などはなく、首を振って与えられる刺激をどうにか逃がそうとするが、じわじわと追い込まれていくだけだった。こんな姿を見られてどうすればいいかなんて私は分からない。

ーーーこのままじゃ、本当にどうにかなってしまう。

「ゃあっ、それ恥ずかしっ…んんっ。」

胸元の手が先端の突起を捕まえた。指先で転がされるそれは今までより強い刺激を受容する。漏れる声を留めようと唇を固く結ぶが、息遣いは荒くなるばかりだ。

「でも、それがいいんだろう?ねえ、声、聞かせてよ。」

切れ長な瞳が細められた真剣な表情に少し掠れた艶やかな声で囁かれれば、許容量を超えた胸の高鳴りに一瞬心臓が止まってしまったかのような錯覚を得る。

「耳…駄目っ…」
「耳?」

クジャは聞くなり、私の耳に唇を這わせた。執拗に吸い上げる音がダイレクトに伝わり、その度にこそばゆいような、よく分からない感覚に肩が揺れる。

「ひゃっ、あん…意地悪っ。」
「よく分かってるじゃないか。もっといいこと、してあげようか?」
「へ…?」

私の答えなど聞かず、クジャはまだ下半身に纏ったままの衣服を取り払う。それから私の足の間に手を忍ばせたところで彼の意図が読めた。

「クジャ、待ってよ。そんなとこ…」
「怖いかい?」

クジャの手を足で挟み、その上から自由になったばかりの手で手首を掴む。彼は思いの外あっさりと手を避け、私の身体を抱き締めた。

「…よく分かんない。」

クジャは私の頭を撫でると、そっと口付けを交わす。芯からとろけきってしまいそうな、甘ったるいキス。それは徐々に情緒を増して、お互いの存在を食むような深いものへと変わっていった。私を抱きしめていたクジャの手が身体を這う。胸、腹、太股、そして…

「んんっ、ぁん…」
「ああもう、ぬるぬるじゃないか。」
「そんなことっ…」

狡い。真っ先にそう思った。いつの間にかに彼は私の秘部に触れ、割れ目を指で往復している。悔しいが、彼の言う通りそこは濡れていた。

「気持ちいいと出てくるんだよ、これ。こんなに濡らして…この後が楽しみだよ。」
「だって、クジャが…ぁあんっ。」

クジャの指が小さな蕾を弾けば、面白いくらいに身体が跳ねる。まるで彼の玩具であるかのようだ。

「#name#、足開いて。」
「えっ、クジャっ?」

彼は端から私の返答を待つ気などないのだろう。足を開くよう促している間にもう既に足を持ち上げ始めている。身体を足の間に捩じ込まれてしまったが最後。どうあがいても時間稼ぎくらいにしかならない。そして、時間稼ぎをしたところで私に何か得があるかと言われればそうでもなかった。

「…………。」

私はできるだけ彼に視線を向けないようにする。というか、まともに彼を見ることができなかった。股を開いた姿をこんなにまじまじと見られたことなど、記憶に残っているうちでは一度もない。いつ触れられるのかという緊張感の中で彼の次の行動を待つ。

「#name#、硬直しすぎだ。」

触られることに意識が向いた状態で語りかけられた私は驚き、咄嗟に彼の方に視線を移した。彼はというと私とは裏腹に片手で私の足を押さえ、もう片方では頬杖をつき、全くもって平静だった。

「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。」
「…クジャがいじめるから。」
「ははっ、それは悪かったね。君の反応が可愛かったんだ。」
「ほら、またそうやって…」

さらりと此方が恥ずかしくなるようなことを口にする彼が憎らしくも思える。ただ、お陰で空気が和んだような気がした。恐らく彼は私を気遣ったのだろう。

「なんだい、拗ねてるのかい?じゃあ、続き、するよ。」
「………きゃっ!?」

だいぶ気持ちが緩まったかと思いきや、彼は突拍子もなく行為の続きを再開する。

「ぁあ、それっ、駄目…」

舌で蕾を刺激される度に、弱い電流を流されたかのような痺れを感じる。

「こうされるの、そんなに好きなのかい?ここ、凄いことになってる。」
「っん、あっ、やだぁ…」

クジャは口での愛撫と共に、愛液を撫で付けるように入口を指でなぞる。二ヶ所を同時に責められて、最早冷静に物を考えることなどできなくなっていた。

「ふふ、簡単に入ったね。」
「なに…?」

気付かぬ間に、クジャの中指が私の膣にすっぽりと埋まっていた。ゆっくりと入口付近を解すように出し入れされ、徐々に奥へと進んでいく。

「あぅ、気持ち…」
「それはよかった。」

しかし、それは思いの外すぐに抜かれてしまい、代わりに蕾の先端を触れるか触れないかの力で撫でられる。まるで焦らされているみたいで今の私には物足りなかった。

「クジャ、もっと…」
「もう癖になってきてるんだろう?…もう一本、入るかな。」

懇願すれば、彼の呟きと共に指があてがわれ、膣内を押し広げていく。指先が入れば、あとはすんなりと奥まで到達した。

「ああっ…」
「もう少し慣らせば問題なさそうだね。」

抽送を繰り返される傍ら、カチャカチャと金属音が鳴っている。

「#name#、手貸して。」
「……!」

彼に言われるまま腕を差し出せば、手のひらに固さを帯びた何かを握らされた。これが彼のものだということが分かるまでに数秒とかからなかった。始めて触れる男性のそれにどうしていいか分からず、頬が熱くなる。

「挿れるよ。」
「…うん。」

怖い気持ちと彼を欲しがる気持ちが葛藤していた。彼のものが秘部に触れる。

「ゆっくりやるから大丈夫。」

そう言って彼は私の頭を撫で、キスをする。その間に少しずつ腰が沈んでいき、先程とは比にならない質量が膣内を圧迫した。

「あっ…おっきい…」
「煽るようなことを言うな。」
「ん、だって…」
「…全部入ったね。痛くないかい?」

私は頷く。腰が完全に密着し、彼そのものを受け入れている感覚にはどこか満足感のようなものがあった。

「動くよ。」

クジャは短く告げると、律動を開始する。

「ぁん、クジャ…なんか…」
「ん?」
「………。」
「なんだい、言ってごらん?」

私の言いかけたことが気になってか、彼は腰の動きを一旦止める。それによって余計に言い出しづらくなったが、割り切って口を開いた。

「その、……なんか、わかんないけど、全部とろけちゃいそう。」
「何を言うかと思えば…」

クジャは額を押さえ呆れたように目を細めると、腰を回すようにして膣壁を責め立てる。それにうって変わって、私はというと耳まで赤くなっているのではないかというくらい顔に熱が集まるのが自分でも分かった。

「#name#、あんまり余裕がないんだ。変なこと言われると加減ができなくなる。」
「んんっ、クジャの…、好きにしていいよっ。」
「だから……そうすると大変なんだ。」
「…どして?」
「…君が痛い思いをするかも。」

クジャは困ったように眉根を寄せる。

「ちょっとくらいなら、平気っ…だよ。」
「馬鹿。ずっと前から欲しかったものが目の前にあるんだ。今までどれだけ抑えるのに苦労したか。」
「…ね、お願い。」
「……本当につらかったら言いなよ。」

クジャは観念したように私の頬を撫でると、自身を私の最奥へと突きつけた。