Hi Betty!

お出かけに行く話 #1

「#name#。一週間後、アレクサンドリアに行くよ。」
「…またお芝居?」
「そう。今回も主演女優はアメリアだ。彼女、恐ろしく人気だねぇ。まあ、あの演技にあの容姿じゃあ、こんなに注目を浴びるのも頷けるけど。」

アメリアとは、今大人気の舞台女優だ。芝居を見にいく度に目にするのだが、落ち着いた茶髪に、手足が長くすらっとした体系の、奥ゆかしい女性で、その慎まやかで艶のある美しさに、男女問わず数多くの人間が虜になっている。

「私、そろそろ見飽きてきたかも。毎回、毎回、彼女が主演なんだもん。まるで、独壇場みたい。」
「これに関しては国王様の趣味だよ。最初から見に行く気なんて更々ないくせに、いつもアメリア主演の芝居を選ぶんだ。そして、後から僕に感想を求める。その度に、“どうにかしてデートに誘えないかな。”なんて言うから“出向かない限りは無理だね。”って返しておくけど、困った王様だよ、本当に。」

既に開封された封筒を片手にちらつかせ、クジャは呆れた目をする。恐らく、そのアレクサンドリアから届いたのであろう封筒の中にチケットが入っているのだろう。度々、芝居好きの女王様と一緒に行く手はずだったチケットが送られてくるのだ。女王様が持っている分の他に、クジャと私が2人で行けるようしっかり1枚買い足して。送り主の、“どうやっても眠くなるんだよなあ。こういうの。俺にはこんなお上品な趣味合わないぜ。”と言っている姿が目に浮かぶ。それなら端からチケットなど買わなければいいというのに。しかし、仲の良い兄弟になったものだ。その昔はこうなることなど、全く想像ができなかったというのに。世の中、本当に何が起こるか分からない。

「ねえ、クジャもやっぱりアメリアみたいな女の人が好きなの?」
「ああ、わりと好きな方だよ。彼女は、淑やかで品があるからね。」
「ふうん…」

なんだか面白くない。すごく。アメリアは確かに綺麗だと思うが、この前アレクサンドリア城に出向いた時以来、つっかかるものがあるのだ。その件には、チケットの送り主が絡んでくるのだが、彼が言うには、“クジャのやつ、なんだかんだでアメリアのことけっこう好みだぜ?ちゃんと見張っとかないと、男は好みの女の子がいたらこっそり手出したりするからな。気をつけろよ、#name#。”とのことらしい。別に大したことではないのは分かっているが、その話を聞いて以来気にしてしまうのだ。どんなに格好ばかり真似てみたって私は彼女にはなれないのが現実である。
ちなみに国王様には、“それ、ガーネット様にも伝えておくね。”と返しておいた。彼は大慌てでさっきの話はなかったことにするようにと頼んだので、レアカード1枚で手を打った。

「道理で…」
「へ…?」
「…なんでもないよ。それより、芝居の帰りに行きたいところ、あるかい?」
「リンドブルム。」
「芝居の帰りって言ったんだけれど。リンドブルムまで行ったら、行って帰ってくるだけで1日が終わってしまうよ。」

クジャの瞳が意味深な動きをしたが、すぐに話題を新しい話題が振られた。私は、思い浮かぶままに質問に答えたのだが、彼にはこの上ないくらいの呆れ顔を見せつけられてしまった。

「でも行きたいの!」

なんとも言えない雰囲気に少し焦りつつも、もう一押ししてみれば、盛大に溜息をつかれた。

「わかったよ。あんまりリンドブルムを回ったことはなかったから、たまにはいいかもね。」

駄目かもしれないと思ったが、何とか意見を呑んでもらえたようだ。しかし、自分で提案しておいてだが、クジャがリンドブルムに馴染む感じはしないので少し不安だった。ジタンはリンドブルムが落ち着くとよく口にしているのだが。

「あのさ、本当にいいの…?」
「いいよ。君は行きたいんだろう?」
「…うん。」

私はこくりと頷いた。